

今日はお休みと言う事で、久しぶりに上野で美術展を見て来ました。
『ヴェルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情』と『大琳派展 継承と変奏』。西洋と東洋ではあるのですが、なんだか頭の中でリンクしていました。
それは「作者の視点で物事はその形を変える」と言う事です。
今日は二つともオーディオガイドを聞きながらの鑑賞だったので、解説口調になっている気がします。&ガイドの受け売りです。
***
まずは『ヴェルヘルム・ハンマースホイ』。
こちらは19世紀のデンマークの画家で、オルセー美術館(パリ)、グッゲンハイム美術館(NY)で行われて回顧展をきっかけに、最近見直されているそうです。解説によればフェルメールに影響を受けたそうで、確かにフェルメールを連想させるシンプルで写実的な作品でした。
フェルメールの写実性は、ピンホールカメラを作品制作の参考に使用したとか、ハンマースホイも写真かと思わせる正確な構図を用いています。しかし彼の作品から受けた印象は、孤独や不安です。
例えば、今回展覧会のチケットにも印刷されている代表作「背を向けた若い女性のいる室内」。モデルはハンマースホイの妻イーダですが、その顔を見せることは決してなく、うなじからは拒絶ともとれる印象を受けます。
今回の展示会には同年代デンマークで活躍した画家の作品も飾られていました。イーダの兄ピーダ・イルステズの作品も出展されていました。そして同じモチーフ、すなわち”背を向けた女性”を扱った作品もあったのですが、イルステズの作品からは何故か暖かさが感じられした。
実は理由はあるのです。例えば、ハンマースホイの作品では室内を描く場合、家具や調度品はほとんど描かれていません。また、光の射す方向と敢えて矛盾したした方向に影を付けるなどにより、見る側に不安感や孤独感を与えてるそうです。
また特に肖像画の場合は,モデルの視線を鑑賞する人間は読み取り、そのモデルが見ていた空間を感じるとか。例えば視線が定まらない肖像画では、より一層に不安定な印象を与えるそうです。
なかなか興味深いですね。
***
次に『大琳派展』。
”風神・雷神は、ギリシャ神話のゼウスが日本まで伝わったもの”と聞いてから、ボクは「風神雷神図」が好きです。で気軽な気持ちで見に行きましたが、良かったです。
と言うのもオリジナル「風神雷神図」は建仁寺の俵屋宗達のもの。その後100年して尾形光琳が宗達のスタイルに感銘を受け琳派が生まれたそうです。
建仁寺にある俵屋宗達のものはもちろん展示されていませんが、琳派の尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一の三人の風神雷神を見比べる事が出来ました。そしてこの三人(宗達も入れれば四人)には解釈の違いがありました。
代表は光琳。宗達のオリジナルでは雷神の太鼓に一部が見切れていることで、逆に空間の広がりを感じる事が出来るのですが、光琳のものでは太鼓は完全に描かれ、風神と雷神の配置を少しズラすことにより、空間に安定を与えているそうです。
また、風神と雷神の視線が交差していることをイメージさせる事により、風神、雷神が呼応していることを印象づけているとか。二神の足下の暗雲も光琳はより黒く、軽やかさの違いが表れているそうですよ。
ボクは一番後年の作品である鈴木其一の風神雷神が好きでした。こちらは金屏風の前作品とは異なり、絹地に描かれています。また暗雲もよりダイナミックで、風神は疾風のごとく流れる様に、雷神は雨雲のごとく重く描かれていました。
***
サイトはこちら。
『ヴェルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情』:
http://www.shizukanaheya.com/『大琳派展 継承と変奏』:
http://www.rinpa2008.jp/
***
『大琳派展』からはカタログを購入して来ました。秋の夜長の楽しみにしたいですね。